1 .<前書き>

深田久弥百名山を踏破して何人かの方から何か書き物に残してはどうかとのお声を頂いた。百名山登頂を達成した方を何人も知っていた私は当初あまり大したことをしでかしたとは思っていなかった。ところが時が経つにつれてもしかすると大変なことなのかもしれないと思うようになってきた。山好きな頑強な男が達成したのではない。私は山が大嫌いであった。百名山登頂を達成した今「山が嫌い」とは言えないが山好きのかみさんや山好きの友人達がいなくなったら果たして一人で山に行くだろうか? 答えは多分「否」である。小さいときは虚弱で学校へ上がるまでは入院を繰り返していたし、小学校でも体育の評価はいつも低く、運動会の徒競走はいつも尻、野球が好きでもクラスでは補欠の補欠で試合には一度も出させてもらったことがない。小学校、中学校といじめっ子に虐められるので学校に行くのが嫌いであった。

中学へ入学した時体重は28キロで骨皮筋衛門、好き嫌いが多く、野菜、魚、うどん、そばはどうしても食べられず中1の時弁当は一年間毎日パンであった。高2の時2000m徒競争での私の記録が学年最低記録として暫く学校の廊下に張り出されていたのを今でも覚えている。こんな男が最近気付くと小学校、中高、そして大学時代の同級生の中でも丈夫で、スタミナもある部類に入っている。勤めていた頃患っていた糖尿病、慢性膵炎も今では完治している。百名山と関わりが出来たのは退職前後なのを考えると登山のご利益としか考えられない。

こんなわけで山が苦手であった私の百名山奮戦記を記すことにした。これは登山の専門書ではないので登山ルートや歩行時間等はあまり記していないが山嫌いの方に何らかの興味を持っていただければそれでいいと思っている。