11.富士山に登る

標高3000m級の山に挑戦していた時、富士山に登るチャンスは意外に早くやってきた。山中湖にあるとあるリゾートホテルが富士山登山の企画をたて参加者を募っているのを知った。家内は既に登っていたしこの際一つ一人で参加してみるかと思いたった。登山前日件のホテルには登山希望者8名ほど集まっていた。見たところ私が一番の年長者である。若者たちについて行けるのかちょっと不安になったが行くしかない。ホテルの登山随行者に翌日の行程の説明を受けながら明日の仲間と夕食を共にし早めに部屋に戻って就寝した。

翌朝、早めにホテル側が用意した朝飯を食べホテルのマイクロバスにて出発する。幾つかある登山口のうち一番ポピュラーな吉田口5合目(2305m)に向かった。5合目に付くと7月中旬であったためか既に大勢の登山者でいっぱいであった。そこで出会った一人のかなり年配の登山者は今回が290回目の富士登山だと言っていた。富士山詣でをする人がいるとは聞いていたが驚きの回数である。富士山は一度登れば良い、あれは眺める山で登る山ではないという人が多い中何に取りつかれてそんなに登るのだろうか? 私は一度登れば充分だと考えている方である。

5合目から3800m近くある山頂までは標高差が約1500mであるから気温差で約10度、又、山道では通常1時間で標高差300m登れるから5時間から、酸素不足で後半ペースが落ちれば6時間かかるかなと予測して歩き始めた。6合目を過ぎ、7合目を過ぎた頃気が付くと一緒に登り始めた同行者達は遥か後ろになってしまっているではないか。グループで登山する時には単独行動は厳禁であるが私の場合は自分のペースを崩すと疲れるので特別今回は許してもらった。私の場合、普段だと標高2100mあたりから酸素吸入量減少の影響で息切れが始まるのだがこの日はどういうわけかほとんど息切れが始まらず、8合目に付いた時には仲間の姿は遠く下の方でほとんど見えなくなっていた。 8合目まで3時間弱で登ってしまったわけである。どん尻になることを覚悟していたのに意外な結果であった。

どうしてそうなったのか考えられる理由が3点ほどあった。まず、私は登って行く先が見えているのが好きである。舗装道が苦にならない。階段が好きである。富士山はこの条件に合っている。目標地点が見えながら登れる御嶽山も比較的楽な気分で登れた記憶がある。仲間が全員8合目まで登ってくるのを待つこと1時間以上であった。2−3人が疲労のためか高山病かでダウンしていたのと雨が降り始めたので初日はここで終わりとし小屋で一泊することになる。

翌朝3時頃から頂上を目指して登り始めたが強い雨と暗さのため展望はゼロである。 2泊することは出来なかったので浅間大社奥宮の小屋で富士登山証明のスタンプを押してもらい下山することとなった。 残念ではあったがこのときの経験で足に自信を持つようになった。有難う富士山、万歳!である。