14.苦労を避けて登った百名山

登頂はしたけれど登山をしていない百名山も幾つかある。自動車、ケーブルカー、リフト等を使えばハイキングのような感覚で1時間もかけずに頂上まで歩ける百名山があるのだ。 高い順に挙げれば乗鞍岳(3026m)、草津白根山(2171m)、剣山(1955m)、霧が峰(1925m)、蔵王山(1841m)、大台ヶ原(1695m)、岩木山(1625m)、八幡平(1613m)、伊吹山(1377m)、筑波山(876m)といった所である。草津白根山霧が峰蔵王、大台ケ原と八幡平は登山者の多くが頂上近くの駐車場まで車で行きハイキング気分で頂上まで歩くのが普通と思われるがそれ以外はちゃんとした麓の登山口から登り始めればそれなりの時間がかかる山々である。麓の登山口から正規のルートで登頂を目指す登山家には敬意を表するが私はすべて狡をして乗り物を使ってしまっている。

乗鞍岳は登山と言っても標高2740メートルの畳平まで自動車で登ってしまうので、実質 300メートルの高度を自分の足で歩くだけである。畳平駐車場から肩の小屋までは広い車道を歩く。その先から登山道らしくなり歩き始めて1時間程度で乗鞍岳最高峰の剣ケ峰に立つことができる。

剣山(つるぎさん)は名前から北アルプスの釼岳(つるぎたけ)と混同しやすいが四国に二つある百名山のうちの一つである。因みに四国にあるもう一つの百名山石鎚山(1982m)である。剣山は登山口の見ノ越まで車で行き、そこからリフトに乗ると頂上近くまで運ばれてしまう。そんなこととは知らずにリフトに乗ってしまったがここは歩くべきだったと思う。里山に登ったみたいで頂上についても何の感激も起きないのである。やはり山はある程度は苦労して登らないと達成感がわいてこない。

岩木山は麓からの正規登山ルートが数本ありそれぞれ4〜5時間の登りである。私と家内はその日のうちに八甲田山も登って酸ヶ湯温泉まで行く計画だったのでスカイラインを8合目駐車場まで車で行った。そこからはリフトを利用しなくても頂上までは大した距離ではない。私達が駐車場に付いた時はリフトの運行時間前だったのでリフトに沿って早足で登った。リフトの上に着くと岩木神社からの登山道を登ってきた年配の登山者に出会った。5時間ほどかけて登ってきたようだが途中で熊に出会って大変な思いをしたと言っていた。麓で熊が出ていて危険と聞いていたがやはりほんとうだったのだ。 幸いなことに我々は熊との対面なく無事登山を終えた。 

伊吹山名神高速道路から眺めると滋賀県の最高峰だけあって威風堂々とみえる。伊吹山ドライブウエイを9合目まで自動車を走らせた。ひどい濃霧で視界は30メートルあるかないか。山頂駐車場に着いても乳白色のミルクの海に沈みこんだようだ。右、左と適当に移動して山頂表示のあるところへ登った。20分ほどで山頂についてしまった。これで伊吹山へ登ったというにはちょっと後ろめたさが残る。

筑波山はケーブルカーを使うと山歩きに慣れていない御仁でも1時間も歩けば男体山、女体山を回れてしまう。一度は麓から歩いて登ってみたいと思っている。