16.平ヶ岳

平ヶ岳に登る正式なルートは新潟県魚沼市鷹ノ巣からの登山道で、そこから下台倉山〜台倉山〜池ノ岳を経て平ヶ岳山頂にいたるルートである。山頂はなだらかで高層湿原があるのだがそこまでの行程が長い上、山中に山小屋はなく、また道中はキャンプ禁止なので健脚者向けの山である。健脚者ですら往復10時間以上はかかると言うのだからその凄さが解る。その正規ルートで登ってしまっていた我が家の山の神はさすがだと思う。

深田久弥の『日本百名山』のうち、奥が深くて大変だと言うのは飯豊本山にも言われるがこちらは上に非難小屋があってシュラーフを持っていけば一応泊まれるのであるから大変さは平が岳の方が上となるようである。こんな大変な山に付き合ってくれる人を見つけるのも大変である。ところがインターネットであれこれ平ヶ岳の情報を集めていると比較的楽に登れるルートのあることが判ってきた。それは皇太子が平ヶ岳に登ったときに用意された特別な登山道とのことである。皇太子が訪れると山小屋が改装されたり、水洗便所になったりいろいろと便利になるところが多いのであるが特別な登山道まで用意されることがあるとは知らなかった。インターネット上では、そのようなルートは環境を破壊するし、公にすべきでないとの意見も見られたが既に大勢の百名山ハンターが利用していることも判った。

私もこの楽に平ヶ岳に登るルートを利用する誘惑には勝てなかったのである。早速、高校同期の登山仲間K君とN君を誘い中ノ岐林道の送迎をしてくれる銀山湖(奥只見湖)の伝之助小屋に予約を入れたのである。当日はN君の奥さんの参加も得て無事平ヶ岳登山に成功した。確かにこのルートは楽な登山道で、あれほど長いこと大変な山と覚悟していた平ヶ岳を簡単に済ませてしまい後ろめたい気がする。