17.山で出会う怖いもの、煩わしいもの(1)

山行で出会う怖いもの、煩わしいもの挙げれば熊、蜂、マムシ、小虫(私は顔にぶんぶんまとわり付いてうるさいので以下ぶんぶん虫と呼ぶことにする)、蛭、笹ダニ、雷、落石、強風、濃霧等であるが、ぶんぶん虫、蛭、笹ダニ以外は命にかかわるので細心の注意が必要である。山に行くとよく「熊に注意」とか「マムシに注意」とか「落石注意」といった立て札を見かける。熊が冬眠している真冬の期間を除き春先から冬が訪れるまでの間、登山者は必ず熊除けのための熊鈴、口笛等を持って山に入るのが普通である。人によっては山行中、携帯ラジオをがんがん鳴らして歩いている人もいる。兎に角音が聞こえれば熊の方から近寄ってくることは無いといわれている。私は登山中に熊に出くわしたことはないが熊に同僚が食われてしまったと言う人に出会ったことがある。熊はやはり登山で注意しなければいけないものの筆頭ではないだろうか。

蜂は大したことないと思っている人もいるかもしれないが、これが大間違いで、下手すると命を落とす羽目になるから怖い。大抵の毒素は、身体の中に入った後、血流に乗り肝臓で分解されて無毒化されますが蜂毒は、人によっては「アナフィキラシー」と言うアレルギー反応を引き起こすことがある。これは最初に刺されたときに、身体の中に蜂の毒に対する抗体ができて、二度目に刺されたときにそれによって激しいアレルギー反応を起こす現象である。現に知っている方の奥さんは生まれつきのアレルギー体質のためか登山中に鉢に刺されてそのまま帰らぬ人となった。

又、私の家内は甲武信岳に登る途中で蜂の大群に襲われ命からがら麓の病院に駆け込み、点滴を受けて何とか命を取り留めた経験がある。その恐ろしさは死ぬと思ったほど大変だったらしくそのトラウマの為二度と甲武信岳には登れないと言っており私が百名山を踏破した後も家内は甲武信岳を除く99名山登頂のままになっている。蜂の巣の近くに人が近づくと一人目、二人目までは、様子を伺っていて三人目が来るとわっと襲い掛かると言う。家内も甲武士岳に登った時には三番目を歩いていたそうで同行の登山者のグループ中被害に遭ったのは家内と四番目に歩いていた二人だけであったと言う。

マムシは登山靴を履き、しっかりした服装で足元に注意して歩けばまあ大丈夫と思われるがマムシでなくても歩いている目の前に蛇が現れれば背筋がぞっとして嫌なものである。ぶんぶん虫と言うのは正式名ではないが顔の周りに無数に飛び回り手で振り払ってもしつこく付きまわり動いても一緒についてきて煩わしいことこの上ない。特に厄介なのは耳の穴に飛び込んだり、目玉に取り付き、コンタクトレンズのように眼球の上にくっ付いてしまい取れなくなる。完全に取り除くには他の人にティッシュペーパー等で取ってもらうしかない。家内と登山しているとほとんどの虫は家内の方に行き、私には付きまとわない。どう言う訳か虫が好む人とそうでない人があるようである。だがこのぶんぶん虫だけは例外で、私にもよってくるので一番苦手である。