18.山で出会う怖いもの、煩わしいもの(2)

次に山蛭である。これは怖いと言うより嫌らしいし、気味が悪い。蛭はどこの山にもいるというわけではないが蛭の多い山があちこちに存在する。有名なのは千葉県の麻綿原高原や丹沢、光岳の登山道などである。たちが悪いのは山を歩いているうちに気がつくと何匹もの蛭が足元から偲び上がって来て足のすねやひどい時には下着にまで潜り込んで至る所血だらけになっていることである。蛭も虫に似て攻撃されやすい人とそうでない人がいるようである。幸いなことに私は一度も蛭の餌食になったことが無いが同伴者が血だらけになったのは目の当たりにしている。山蛭は塩をかければ解けてしまうが登山者用には蛭除けスプレーも売っている。

山で笹藪を通って進むと気が付かぬ間に笹ダニの取り付かれていることがある。山蛭と同じように気が付かない間に肌に取り付くのだが蛭よりたちが悪い。蛭の場合には血をすって膨れ上がった蛭は皮膚の表面にくっ付いているので取り払うことが出来るが笹ダニは気が付くのが遅いと皮膚の中に潜り込みどんどん内部に食い込み、取り出すのが大変なのである。一度、家内の腕の皮膚に食い込んだ笹ダニを針を使って皮膚の下から穿り出したことがあるが気が付くのがもう少し遅ければ医者に行って切開してもらわねばならなくなったかもしれない。家内が虫に神経質になっているのも頷ける。

山で雷に遭うと生きた心地がしない。毎年何人かの登山者が雷に打たれて命を落としている。木立の中を歩いている時なら何とか身の隠し場所も見つけられるかもしれないが石ころだらけの尾根道などで雷に遭うとどうしようもない。雷が早く遠のいてくれるよう神に祈るしかない。燕岳から大天井岳を通り槍ヶ岳に向かって東鎌尾根を進んでいた時、突如雷が鳴り出した。周りを見渡しても身の隠し場所が見当たらない。この時ほど慌てたことはない。普通は天気予報を良く調べてこのような事態に遭遇しないよう登山計画を立てるのであるが天候が急変し危ない目に会うこともあるのである。