32.笠ヶ岳、黒部五郎岳、薬師岳縦走

光岳登山を済ませて間もなく、高校同期の山仲間二人と岐阜県から富山県に連なる北アルプス笠ヶ岳黒部五郎岳薬師岳を一気に縦走する計画を立てた。3座ともそれぞれが結構厳しい山なので縦走ともなると相当な覚悟がいるのだが友人二人は快く同行してくれることになった。

初日は新穂高まで車で行き、そこから林道を1時間弱歩くとわさび平小屋である。ここはハイキングコースにもなっているので軽装のお客さんも多いし、風呂にも入れる。ここで一泊し身体を休めて翌日からの縦走に備えることにした。 翌日の朝食は弁当にしてもらい、宿から少々新穂高方向へ戻ったところにある笠新道登山口へと急いだ。 笠新道の途中に水場がないとの事なので登山口で旨い水を飲んだ。この笠新道は多くの人から大変厳しい登山道であると聞いていたので気を引き締めて歩き出した。

笠新道入口から杓子平らへの道は急登道であったが嬉しいことに一時間半も登ると樹林帯を抜け、槍〜穂高連峰の素晴らしい山容とお花畑が目に入ってきた。 不思議なことに私は前方が見える登山道は大好きで疲れをあまり感じない。 富士山然り、御嶽山然りで気持ちよく足が進む。 そんなわけで思ったより楽に笠が岳山荘に着くことが出来て、午後の早い時間に山頂に立つ事が出来た。 笠新道を正味6時間ぐらいで登ってしまったことになる。インターネットで調べると7-8時間ぐらい掛けて登っている人が多いようであるから我々のペースはかなり速いほうであった。

笠が岳山荘では梯子付き上段のスペースが与えられた。 込み合っていなかったが暫くすると一人の老年の登山客が入り込んできた。70歳の田中さんという方だ。話を聞くと前日夕方4時までテニスをやり、その日の夜行バスで新穂高に着き、4時間強で笠が岳に登ってきたとのこと、驚くほどの健脚である。しかも両膝を痛めていて整形外科医に注射を打ってもらっているというのだから恐れ入る。最近は若い人、特に女性軍が山に戻ってきているようだがこのような元気のいい老人にも時々出会うことがある。