36. 99座目の山で勇気ある撤退

利尻山を終えて百名山完登まで残すのは新潟県飯豊山山形県朝日岳の2座になった。既に両方とも登ってしまっていた家内は「どちらも付き合うよ」と言ってくれていたのだが飯豊山には高校同期の山仲間とも一緒に登ろうと約束していた。 結局、99座目の飯豊山には友人達と登り100番目の朝日岳には家内と登ることにしたのである。
 
飯豊は何人かの山のベテランに奥が深くて大変な山だと聞いていた。 飯豊連峰を縦走するには数日を要すると言う。我々が目指したのは主峰の飯豊山だけであったが、それでも山の上で一泊せざるを得ないのである。しかも寝具は持ってゆかねばならない。8月1日に高校同期の友人4名と大日杉登山口より登り始めた。5時間以上も登ったところで急に現れた深い雪渓と大きなクレパスに行く手を阻まれた。尾根に出る手前で切合小屋はさほど遠くないはずだ。何とかして尾根まで登ろうとルートを探したが先行登山者の足跡がどうしても見つからない。

強行突破するか撤退するかリーダーのK君の判断を仰いだ。 暫し黙考した後K君の出した結論は勇気ある撤退であった。 もし直ぐに尾根に出られなかったら日暮れ前に下山出来ないというのがその理由であった。 無理して進んでいたら遭難していたかもしれない。そう考えるとこの判断は正しかったと思う。

その日は何とか暗くなる前に下山できたが日程が一日余ってしまった。 そこで思いついたのがさほど遠くない朝日岳へ回ろうと言うことであった。 朝日岳登山口の一つである古寺鉱泉の朝陽館に着いたのは日が暮れて周りが暗くなってからであった。